chapter8LastGuardianIIStarting Starschapter8「Crossing」 シュレス「シルビア、大丈夫か!?」 シルビア「こ、こんな傷、どぉーってことねぇーって!」 そうはいうが、目の前のフィトラファイゼンからは煙が出ていた。 シュレス「ヒィリス、シルビアに回復魔法とサポートを。 私がレドナを追い詰めておく、どうやらあの武器にも限界があるとみた」 鋭い視線で、レドナを見た。 ヒィリスは頷き、シルビアに回復魔法をかけ始める。 レドナ「もう一発!!」 剣を真上に振り上げる。 カートリッジをセットし、機械音と共にそれが1つとなる。 6発の弾丸が、排気口から飛び出す。 その威力に、足がかくんとなるが、悟られぬようにふんばる。 爆音と共に、刃が緑色の眩しすぎる煌きを放つ。 シュレス「はぁっ!!」 銀色の剣が、レドナに向かって突きつけられる。 だが、レドナは逆にこれを利用した。 あえてグリュンヒルEX-Lでは攻撃せずに、そのまま左に飛んで避ける。 ここまでくると、シュレスも推測が付いた。 シュレス「ヒィリス!!最大限の防御魔法を!!」 レドナ「おらぁっ!!!」 悟ったシュレスが、焦った声でヒィリスに指示を出す。 瞬時、ヒィリスは防御魔法を展開する。 だが、膨大な魔力を秘めたグリュンヒルの刃に、太刀打ちできずに、すぐに防御魔法は解除された。 そして、中に居たヒィリスとシルビアに大打撃を与えた。 ヒィリス「きゃっ!!」 シルビア「ううぅっ!」 地面に倒れこむ2人。 レドナ「くっ、やばい、連続でロードしすぎたか・・・?」 煙を上げるグリュンヒルを片手に、レドナが呟く。 排気ダクトからの排気量が尋常ではない。 それに、内側からのひび割れが目立った。 その時、エンフィから通信が入った。 エンフィ「れ、レド・・・ぅん!! す・・ぃ・・まり・・・・んのう・・・・」 ノイズで、声がかき消された。 しかし、これだけ聞き取って、ノイズが走ったとなると答えは1つだった。 レドナ(凄い魔力反応・・・・!?) 咄嗟にレドナは上を見上げた。 すると、病院付近で戦ったときの、あの白い魔法陣が空に現れていた。 そして、もうその魔力は十分になっていた。 シュレス「我等の主の攻撃だ・・・・レドナ、やはりこれで最後だな」 シュレスが勝利の笑みを浮かべる。 瞬間、空から魔力の塊が雨のように降ってきた。 避けることのできないレドナに、その雨は残酷にも降り注ぐ。 レドナ「ぐぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」 体中を走る激痛に、酷い叫びを上げる。 その雨はすぐに止んだ。 だが、レドナはもうすでにボロボロになっていた。 シルビア「は、はやて!」 はやて「あそこに、レドナが居るん?」 魔術の杖、アポカリプスで、煙渦巻く場所を指した。 ヒィリス「えぇ、はやてちゃんの攻撃が直撃しましたし」 はやて「うん、これで終らせるで」 アポカリプスを中心に、魔法陣が展開された。 至近距離で放つ、攻撃魔法の術式だ。 一方、煙の中では。 レドナ(向こうにアイオーンが・・・・・!? くそっ、会話内容がよく聞こえねぇ・・・・) 向こうでかすかにしゃべっている声が聞こえる。 しかし、レドナの耳にはそれはかすかにしか届かなかった。 名前のようなものが聞こえたが、上手く聞き取れない。 レドナ(とにかく、ここでやられるわけにはいかない!! はやてを・・・・・) はやて(ここで、終らせる・・・・。 暁君を・・・・・) 煙が晴れた。 同時に、レドナは溜めていた足の圧力を開放し、グリュンヒルEX-Lを構え飛翔した。 はやても、リーンジャケットについている漆黒の羽を羽ばたかせ、アイオーンを構え飛翔した。 そして、2人は互いの存在に気づきあった。 レドナ「・・・・・・!!」 はやて「・・・・・・!!」 2人の間が、狭まっていく。 レドナは、すぐに、グリュンヒルを押さえ、剣の軌道をそらそうとした。 レドナ「はやて・・・・・?」 はやて「暁く・・・・・ん?」 一瞬、2人の脳裏に、2人の記憶がよみがえる。 だが、はやての魔法は、言うことを聞かずして、レドナに多大な魔力の塊をぶつけた。 白い閃光が、レドナに直撃した。 レドナ「ぐはぁっ・・・・・!!!」 はやて「いやあああぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!」 苦痛に、レドナが口から血を吐いた。 その音を掻き消すかのごとく、同時にはやての叫び声が上がった。 レドナの手から、グリュンヒルが落ちる。 耐久力が低くなったグリュンヒルEX-Lは、地面にぶつかって完全に壊れた。 ロードしていたレムリアの魔力が行き場を失い、内部爆発した。 その少し後に、レドナが地面に叩きつけられる。 真紅の目は閉じ、力尽きて、だらんとしている。 次第に、レドナの周辺地面が、赤く染まっていく。 はやて「う、うそや・・・・・あ・・・きら・・・くんが・・・・」 膝を突いて、無気力にはやてもだらんとしている。 目から涙が溢れ、落ちた帽子を拾おうともしない。 無論、アポカリプスも音を立てて地面に倒れた。 シルビア「お、おい・・・・どうしたんだよ、はやて」 心配そうに、シルビアがはやての横に着地する。 シュレス「シルビア、主を連れて逃げるぞ」 鋭い目が、敵の接近を捉えた。 ヴァルニス「れ、レドナァァッ!!」 フィーノ「レドナさん!!」 魔法陣内に、2人が入ってきた。 シルビア「今ならあの2人だってやれる!」 ヒィリス「でも、はやてちゃんがこの状況じゃ・・・」 すぐさま、バロックガンブレードの銃撃が襲い掛かった。 シュレス「私が時間を稼いでおく、2人は主を!」 ヒィリス「えぇ」 シルビア「わぁーったよ」 泣きじゃくり、呆然とするはやてを抱きかかえ、2人は魔法陣から出て行った。 シュレス(なぜ主は、レドナを見て―――いや、そんなことは後でいい。 この状況で、どうやってヤツに憑く"神"を奪うか・・・。 こんな好機は二度とないはず) 構えるチェーンブレイバーに、力が入る。 シュレス(時間稼ぎとは言ったが、我等の永遠なる生のためっ!!) シュレス「はぁぁぁぁっ!!!」 振り上げた銀色の剣が、炎の光に照らされ美しく光り輝く。 ヴァルニス「フィーノ、レドナを連れて逃げろ!」 フィーノ「わ、分かりました!」 ヴァルニスも、バロックガンブレードを構え、チェーンブレイバーの斬撃を受け止めた。 シュレス「退けぇっ!!」 ヴァルニス「うぅっ!」 チェーンブレイバーが鞭と化し、ヴァルニスを襲った。 バロックガンブレードが手から離れて、地面に落ちる。 それを拾う隙に、シュレスはフィーノ目掛けて、その鞭を伸ばした。 フィーノ「防御魔法、プロテクトッ!」 右手を開き、防御魔法を展開する。 物理攻撃であるチェーンブレイバーの鞭は、それに弾き返された。 シュレス「ここで使うしかないか・・・・」 そっとシュレスは呟いた。 ヴァルニスから距離を置き、チェーンブレイバーを剣状に戻す。 両手で剣を握り、目を閉じる。 すると、銀色のチェーンブレイバーの周辺に、白い魔力が溢れた。 シュレス「くらえぇっ!!シャムシエルカッタァーッ!!」 剣をむやみやたらに降りまくる。 すると、その切っ先が鎌鼬となって、2人を襲った。 ヴァルニス「ぐぅっ!!」 フィーノ「きゃぁぁっ!!」 2人が怯んだ隙に、シュレスは急いで近寄り、レドナを奪おうとした。 しかし、再び現れた敵に、それは阻まれた。 ???「あっははっ!デモンアルターのベルゼルガさんみぃ~っけ♪」 シュレス「!?」 妙に甲高い声が聞こえる。 シュレスが声のした上を向く。 すると、2本の短剣、双剣を構えた少女が自分目掛けて降りてきた。 咄嗟に後ろに下がり、攻撃を回避する。 ???「いっただき~!!」 回避した地点に目掛けて、巨体の大男のパンチが炸裂した。 それを、ひらりと飛翔して回避する。 シュレス「この状況でまた新手か・・・」 着地し、再びチェーンブレイバーを構える。 カース「残念だが、逃がしはしないぞ」 後方に、漆黒のリーンジャケットを着たカースが立っていた。 その手には、当然の如くデルバルスが握られていた。 シュレス「今度は、反エクステンドが相手か」 カース「エルザ、クロム、遠慮はいらない全力で捕獲するぞ」 エルザが双剣、スパイラルエッヂを。 クロムが鉄拳、メタルガントを。 カースが大剣、デルバルスをそれぞれ構えた。 ヴァルニス「フィーノ、今のうちに逃げるぞ」 フィーノ「は、はい!」 ばれぬよう、ゆっくりと2人はレドナを抱え魔法陣から抜け出した。 エルザ「なーんか面倒だから、ちゃちゃっとやっちゃお~♪」 クロム「おっす!!」 スパイラルエッヂの斬撃と、メタルガントの拳が襲い来る。 寸前でシュレスは避け、チェーンブレイバーでクロムに切りかかった。 シュレス「もらったっ!!」 クロム「ど~かな?」 チェーンブレイバーはクロムのぶよぶよとした肉体に埋もれた。 シュレス「な、き、切れない!?」 クロム「デブをなめちゃいけないんだよ~」 一瞬の隙を突き、クロムの拳がシュレスに直撃した。 シュレス「ぐあぁぁっ!!」 思いっきり顔面を殴られたシュレスの右頬が赤くなる。 そして、シュレスが倒れた地面が炸裂した。 シュレス「ぐぅぅぅっ!!!」 エルザ「う~ん、トラップマスターの私の地雷は大成功だったねぇん♪」 満足げにエルザが言う。 シュレスは、連続の攻撃に意識が朦朧としていた。 シュレス(ここで・・・・負けてたまるか・・・。 主を・・・・あの優しい主を置いて・・・・死ねるものか・・・!!) 強く心に問いかけた。 しかし、現実は残酷に、その意思を挫かせた。 カース「拘束魔法、キャッチワーム」 静かにカースが言う。 開いた右手から、ワーム状の光が出てくる。 シュレス「・・・・!!」 シルビア「シュレスッ!!」 シルビアが、急いで駆け寄ってくる。 シュレス「し、シルビア!逃げろぉっ!!」 しかし、それに答えず、シルビアはシュレスに離脱魔法をかけた。 シュレスが、戦闘区域から離脱し、現実世界に戻る。 キャッチワームの攻撃も、シルビアの手足につき、シルビアは完全に拘束された。 シュレス「シルビアアァァァァァッ!!!!」 しかし、その声は全て届かず、途中で途切れ、シュレスは現実世界に存在を飛ばされた。 カース「仲間をかばい、自らの命を差し出してきたか・・・」 シルビア「うるせぇっ!ぜってーにアタシらの主が助けに来るんだ!!」 エルザ「あはははは~、小さいくせに生意気な子~あははははは~」 そういって、シルビアを押し倒した。 カース「はやくザルバのところに連れて行くぞ」 エルザ「オッケ~ぃ」 クロム「うっす!」 翌日、神下病院。 はやて(暁君が・・・レドナ・・・。 レドナが・・・暁君・・・) 未だに、昨日の事をしきりに思っていた。 それもそのはず、自分が愛した人が、自分が憎むべき人だったからだ。 ヒィリス「はやてちゃん・・・・」 ずっと傍に付き添っているが、かけてやる言葉がない。 はやて「なぁ・・・・ヒィリス・・・」 はやてが、ゆっくりと言う。 今にも泣きそうな声で。 はやて「どうして・・・ヒィリスたちはレドナの事を追っとるん・・・・?」 ヒィリス「そ、それは・・・」 その時、病室のドアが勢いよく開いた。 見ると、ボロボロに傷ついたシュレスだった。 はやて「し、シュレス!? どないしたん、その傷・・・!!」 シュレス「シルビアが・・・・反エクステンドに・・・・ぐっ」 シュレスのすぐ後ろに、数人の看護婦が駆けつけた。 看護婦A「だ、大丈夫ですか!?」 看護婦B「すぐに診察を!」 シュレス「私は大丈・・・・・・」 ぶ、といい終える前に、シュレスは力尽き、倒れた。 はやて「シュレス!!シュレスゥッ!!」 その後数時間し、シュレスは意識を回復した。 軽い貧血だったそうだ。 はやて「シュレス・・・・ほんま、大丈夫?」 シュレス「えぇ、心配かけてすみませんでした」 申し訳なさそうに、シュレスが言う。 はやて「許したるよ・・・せやけど、ウチの質問に答えてくれたらや」 シュレス「・・・・?」 一間置いて、はやては続けた。 はやて「シュレスをこんなにしたんも、シルビアをさらったんも、レドナ君達なん?」 シュレス「いえ・・・彼らとは別の組織、反エクステンドです」 はやての顔に、少しホッとしたような気配が察せられた。 そして、シュレスはもう一つ別に、レドナに君付けをしていることに気づいた。 はやて「じゃあ、次や。 ウチからの最後の命令やっていったら、レドナ君を追うの、やめてもらえるやろか?」 シュレス「えっ・・・・・」 以外な発言だった。 はやて「シュレス達には、黙っとったけど・・・・。 ウチ、鳳覇 暁君のことが好きになったんよ」 シュレスは、黙ってそれを聞いた。 そのままはやてが続ける。 はやて「けど、昨日の戦闘で、暁君とレドナ君が同一人物だって分かったんよ。 せやから・・・・ウチ・・・もう、どうしていいか・・・わからんくなって」 はやての目に、涙が溢れてきた。 今にも零れ落ちそうな涙。 シュレスが、初めて見たはやての一面。 はやて「レドナ君はいっつもウチに優しくしてくれて・・・・。 ウチを守ってくれたりもしてくれて・・・・」 シュレス「はやて・・・・」 必死に涙を堪えようとするはやて。 しかし、その涙は重く、頬を流れた。 はやて「せやから・・・ウチにレドナ君を討つことはできへんのや!!」 はやてが泣き崩れた。 下を向いて、服の袖で涙を拭う。 その、はやての姿に、シュレスは複雑な気持ちになった。 はやて「なぁ・・・なんで皆はレドナ君を追っとるん・・・・? レドナ君が、なにか悪いことでもしたん・・・?」 シュレス「・・・・・レドナは、危険すぎる神に取り憑かれています。 今はまだ、眠っている神が―――」 はやて「え・・・・?」 はやての顔が、ようやく上がった。 シュレス「デモンアルターは、その神を封印するための力。 そして、我等ベルゼルガは、その神に取り憑かれた物から神を取り出すための力」 はやて「そ、その神ってのは、どうやって取りだすん・・・・?」 シュレス「憑かれた人物を殺すか、その神の目覚める条件をクリアさせ、具現化させるかです。 しかし、彼についている神の条件は、我等には分からない」 はやて「そう・・・やったんか・・・・」 再び、はやての顔が沈む。 その姿を見るのが、シュレスは辛かった。 そこで、シュレスは思い切った策に出た。 シュレス「もし、彼の神が目覚めたら、その時はレドナを殺します。 しかし、それまでの間であれば、我等も主の先ほどの命令に従います」 はやて「・・・・・シュレスゥ・・・」 はやては、さっき以上の涙を流し、シュレスに抱きついた。 はやて「でも、その前にシルビアを助けださななぁ」 シュレス「えぇ、シルビアを取り戻してから、また考えましょう」 To be next chapter ジャンル別一覧
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